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読書メモ なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか

読書メモについて

まずこのブログは自分が読んだ本で得たことを時系列にしてまとめることを目的としている。したがって書評ブログのように本の内容を要約してわかりやすくしたりはしていない。

ここの投稿で主眼を置くのは、

  • 気づいたことを記録できているか?
  • 読んだ後に行動がどのように変化しそうか?

を記録することです。

したがって、内容が稚拙な点はご了承ください。

読み初め

チャンネルくららで知った渡瀬裕也さんの著書。

「民主主義」と「分断」と言えば、トランプ大統領就任の時を思い出した。この本もその文脈が書かれている。なぜトランプ大統領の登場が「アメリカの分断」なのか?という問いに答えを出している本だと思う。

分断のやりすぎ

そもそも何のための分断なのか?

装置のトラブルを解決するときは、機能を分割(分断)して認識し問題の有無を確認する。このときの分断という行為は、装置の故障を解決するために不可欠である。

では、人々をアイデンティティに基づいて分断するのは誰かのためになることなのだろうか?

本書では選挙と学者の食い扶持のため、とか書かれている。しかし本当の答えは、承認欲求なのだろうと思う。誰かに自分の特性を言い当てられ認められたい、という欲求が選挙で有効活用されているのだと思った。または、一貫性の罠であるかもしれない。自分が認識したアイデンティティに一致したことをやりたくなる特性を有効活用して票を得ている。

このアイデンティティは選挙で活用できるレベルまで強調され、それが社会の分断という現象を招く。

社会の分断は問題だから、行政によりケアされる。そして社会的には発見されたアイデンティティを認めるために、またはそのアイデンティティを持つ人の気持ちや自尊心を傷つけないように気を使い始める。その結果、禁止用語が増えていく。そうして、生きづらい世の中になっていく。

強制される統一感

中国共産党は人民の分割を許さないから、世界的にも認めていこうとなっているアイデンティティも認めない。仮にアイデンティティの違いで分断を図ろうものなら、逮捕されてしまうから分断は深くならない。しかし強制力が働いているから分断が深くならないだけで、人々は少なからずアイデンティティの違いで不快感を持つ人は出てくる。

たとえば、春節時期になると田舎の実家に帰る地方出身者と職場の近くに残る都市出身者。現在大流行中のコロナウィルスの影響で地方出身者は実家で足止めを受け、この問題が収束するまで都市部にある職場は少ない人間だけで回さないといけない。そういうときに不平不満というものが出て、人々の気持ちが分断されるかもしれない。

中国においては、構造的な社会の分断があるものを押さえ込んでいる。なぜなら中国が大国である理由は、あの広大な平野部分を1つの国家が支配している、その中に世界第一位の人口がいるということだからだろうが、これはこれで生きづらい社会である。

分断を許容すること

分断を意識させられたアメリカと、無理やり統一しようとする中国の事例を見たように、アイデンティティをたくさん認識してもしないように強制しても問題がある。

この著書が言う解決策は、このアイデンティティをしなやかで強靭にしておくと言うもの。

学者の発見したアイデンティティは所詮人間を一部の面からしか表現していないものだから、「直接あって話してもないし、一度話したとして、何知ったこと言ってるんで?」というノリで突き返すのがいいのかもしれない。

また似た話だとは思うが、自分に合っているなと思うアイデンティティであったとしても、そのアイデンティティが語る特性を100%自分に当てはめる必要もない。

さらに、前近代的なものでアイデンティティを形成している場合、たとえば家系や身分を理由に考えるのをやめている場合は、本を読み自分で考える力を鍛えると良い。正確には真っ当な議論に耐えうる知識量を持てば、自分の頭で考える余地が生まれる。

しなやかで強靭なアイデンティティを持った先にあるもの

自分のアイデンティティを自分で選び取れるようになることを、「しなやかで強靭なアイデンティティを持つ」と表現されている。このようなアイデンティティを持てば、自分の考えの答えを他人から与えられるのではなく自分で選択できるようになる。そうやって初めて自由を手にしたと言える。

この本から得たもの。応用できること。

キャリア形成論にも近いが、理工学専攻でというアイデンティティを持ってしまうと営業や経理などの文系職種は選びにくい。しかし、自分のアイデンティティが柔軟であれば、あらゆる職種、職業、業態を選んでも違和感はない。そういう職歴や学歴というものもアイデンティティとして機能する。その職歴や学歴から自分のアイデンティティを決め、職業選択の幅を狭くすると、社会の分断というより労働力の流動性の分断につながってしまっている。

この著書は政治学の関係の本だと思っていたが、キャリア形成の話にもつながるように思えた。